15か月の実測から計算した、10年後の話
固定価格買取(FIT)は10年で終わります。そのあと売電単価がどう変わるか、売り先で何が違うか、そして蓄電池が無かった場合ともう1台足した場合でいくら変わるのかを、わが家の実測値から計算しました。実測レポートの6章にあたる部分を、独立したページに分けたものです。
2035年に固定買取期間が終わります。売電単価だけを差し替えて計算しました。
卒FIT後の実質電気代(売電8円で試算)
電気料金87,484円に対し、売電収入が年84,696円(買取実績を15か月から年換算)から45,168円(8円×5,646kWh)に減るため。売電7円なら年47,962円、9円なら年36,670円の持ち出しです。これに電気料金の値上がりが乗るので、売電8円のまま電気料金が2割上がれば59,813円、3割なら68,561円。売電単価と電気料金の組み合わせしだいで、年3万7千円〜6万9千円の幅に収まります。
いまの電気代の持ち出しを小さくしているのは売電収入なので、そこが下がると持ち出しが増えます。ただし電気代が上がるほど「売るより貯めて使う」価値も上がるため、卒FIT後は蓄電池の役割が大きくなります。
上の試算で使った8円は、大手電力の標準的な買取価格に合わせた保守的な数字です。実際には売り先を選べます。2026年1月時点の東京電力エリアの例です。
| 売り先 | 買取単価 |
|---|---|
| 東京電力EP「再エネ買取標準プラン」(手続きしなければここ) | 8.5円 |
| ENEOS / 住友林業スミリンでんき | 11円 |
| 東急パワーサプライ | 11.1円 |
| idemitsuでんき | 11.5円 |
| エネクスライフサービス | 12.5〜13.5円 |
| スマートテック「スマートFIT」 | 14.6円 |
卒FITを迎えても手続きをしなければ、大手電力の標準メニューに自動で移ります。何もしないと一番安い単価になるということです。乗り換えれば11〜14円台が狙えるので、わが家の売電量5,646kWhなら、8.5円のままの場合と比べて年14,115円〜34,441円の差になります。
ここで一つ、順序が逆転していることに気づきます。いま新規で設置した人の5〜10年目の単価8.3円は、卒FIT後の東電EP標準8.5円よりも安い。新電力に乗り換えた場合の11〜14円と比べれば、その差はもっと開きます。「FIT期間中は手厚く買い取ってもらえる」というイメージは、少なくとも後半6年については実態と合っていません。
ただし注意点もあります。FITの8.3円は10年間固定で保証された価格です。卒FIT後の買取単価は各社が随時見直すもので、電気の契約とセットが条件のプランも多く、10年後も同じ水準が続く保証はありません。
出典:東京電力エナジーパートナー公式(再エネ買取標準プラン 8.5円/kWh・税込)、新電力の単価はエネチェンジの比較記事(2026年1月24日更新)より。
誰でもそう考えます。売る相手は自分で選べるはずだ、と。ところがFITに関しては、選べません。理由は3つあります。
第一に、売り先が法律で決まっています。2017年4月1日以降にFITの特定契約を結ぶ場合、契約の相手方は一般送配電事業者(関東なら東京電力パワーグリッド)と定められています。単価も、国が年度ごとに決める調達価格です。売り先を探す余地も、価格を交渉する余地も、そもそも制度の中にありません。
第二に、卒FIT向けの買取プランはFIT期間が終わってからでないと買取が始まりません。たとえば丸紅新電力は、満了1か月前までなら申し込みを受け付けるものの、買取の開始は「固定価格買取期間が終了した日の翌日から」と明記しています。満了を待つ以外にありません。
第三に、FIT認定を自分から廃止して非FITとして売る道も理屈の上ではありますが、一度FIT認定を廃止すると、同じ場所で再びFIT認定を取ることはできません(資源エネルギー庁)。戻れない選択である一方、住宅の余剰電力を非FITで買い取る一般向けのプランは、調べた範囲では見つかりませんでした。降りた先に受け皿がない状態です。
整理すると、FITは相手と値段を決める普通の売買契約ではありません。「10年間、国が決めた価格で、必ず買い取る」という制度に乗るかどうか、という選択です。乗れば価格は保証されるかわりに、売り先も単価も動かせない。自由がないのではなく、自由と引き換えに10年分の確実性を買っていると考えるほうが実態に近いと思います。相場が8.3円を割り込んだとしても、こちらは8.3円で買ってもらえるわけですから。
では5年目以降は打つ手がないのかというと、そうではありません。売るのをやめて、自分で使えばいいのです。経済産業省は同じ資料のなかで、自家消費分の便益を27.31円/kWhと置いています。8.3円で売るより、34円で買っている電気を減らすほうが3倍以上の価値があるという計算です。
エコキュートを昼に沸かす、蓄電池を貯める方向で使う、洗濯乾燥を昼に回す——後半6年の単価が低いのは、おそらくそこへ誘導するための設計です。わが家がやっている「エコキュートの昼間沸き上げ」が年1.5〜2.5万円効いているのも、同じ理屈です。
出典:資源エネルギー庁「変更認定申請・変更届出・廃止届」、特定契約の相手方については中国電力「ご契約のお手続き(FIT制度)」、丸紅新電力 卒FIT買取サービス、自家消費分の便益は調達価格等算定委員会の資料(PDF)より。
2台目の前に、1台目の話をします。日別データから、蓄電池を積まなかった場合の収支を復元できます。 充電に回った電気はそのまま売電されていたはずで、放電でまかなった電気はそのまま買電になっていたはずだからです。 基準期間2025年9月〜2026年8月(365日)の実測では、充電2,558kWh・放電2,024kWhでした。
| 条件 | 売電 | 買電 | 売電収入 | 電気料金 | 実質 |
|---|---|---|---|---|---|
| 蓄電池なし | 7,765 | 4,379 | 116,479 | 148,889 | 32,409円の持ち出し |
| 1台(実際の構成) | 5,208 | 2,355 | 78,113 | 80,068 | 1,955円の持ち出し |
電力量はkWh、金額は円/年。買電34円・売電15円で計算。
蓄電池1台がもたらしている差
この固定単価の試算では、1台でも年1,955円の持ち出しです。実際の請求・売電収支とは異なります。蓄電池が無ければ年32,409円の持ち出しになっていた計算で、1台が30,455円ぶん埋めています。売電単価が8円に下がる卒FIT後は、蓄電池の役割がさらに大きくなります。
この試算に効率の仮定は入っていません。実測した充電量と、エネルギー収支から復元した放電量だけで出ています。ただし、充電に回った電気がすべて売電できたと置いているので、パワコン出力9.9kWの頭打ちに当たる時間があれば、その分は小さくなります。
なお設備費225万円は太陽光と蓄電池がひとまとめの価格なので、蓄電池だけの回収年数は出せません。
2025年6月1日〜2026年8月31日の457日分の日別データで、1日ずつこう計算しました。
金額は、充電した分は売れなくなり、取り出した分は買わずに済むという形で計算しています。ロスがあるぶん「売れなくなる量」のほうが多いので、両者を別々に単価に掛けました。
2台目が1年に扱える量
売電と買電が同じ日に両方発生していたのは457日中418日(91%)。ほぼ毎日、余剰を売りながら別の時間帯に買っています。幅は往復効率の置き方によるもので、下が実測の79%、上が仕様値の90%です。
| 前提 | 年間効果 | 15年の累計 |
|---|---|---|
| 現在(買電34円・売電15円) | 16,330 〜 21,395円 | 24.5 〜 32.1万円 |
| 卒FIT後(買電34円・売電8円) | 25,930 〜 30,995円 | 38.9 〜 46.5万円 |
| 卒FIT後+電気代3割高(44円) | 36,784 〜 43,338円 | 55.2 〜 65.0万円 |
つまり自己負担が39万〜47万円を下回れば回収でき、超えれば損という線になります(卒FIT後・15年で見た場合)。
2台目は冬のための投資でした。効果が最大なのは1月の150kWh。買電が多い冬ほど吸収の余地が大きく、逆に4〜5月は売電が豊富なのに買電がほとんどないため35〜45kWhしか働きません。2台目を使い切れる日は集計457日中101日だけで、残りの356日は容量を持て余します。
往復効率について。仕様上は9割ですが、実測は79%でした(基準期間2025年9月〜2026年8月の365日の放電÷充電)。季節差はほとんどありません(77.9〜80.6%)。時間別データ5日分だけを見ると89.5%に出ますが、そのうち2日は前日に充電したぶんを放電しており、日をまたぐ分だけ過大に見えていました。
ただし79%には待機電力のような固定的な損失も含まれているはずで、2台目を足したときの効率がこれと同じとは限りません。どちらか一方に決められないので、上の表は79%と90%の幅で示しています。
この試算の弱点は、日合計での近似だという点です。1日の中の時間の前後は見ていないので、朝に買って昼に売った日も「吸収できた」と数えています。やや過大評価の方向です。
逆に、買電単価を34円で置いているのは控えめな側です。同じ基準期間の請求額は91,238円で、モニター買電量2,356kWhで割ると38.73円です。請求とモニターは期間や計測値が一致しないため、34円は実績単価ではなく固定の仮定です。記事の第4章に書いた検針票の実効単価35.11円で計算すれば、効果はもう少し大きく出ます。
計算は公開しているCSVから再現できます。
一条工務店施主の記録/電気代と総額の実測
一条工務店で家を建てた一個人が、自宅の実測値と手元の書類をもとに書いている記録です。一条工務店とは資本関係も業務上の関係もなく、公式サイトではありません。掲載している数字はこの1軒のものです。
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